【深】独り言多めな読書感想文

⭐️1つの作品に対して記事が複数に渡るものを収録⭐️

【読了後必ずゾッとする】朝井リョウさん『スター』


人の話を聞けない人がいる。そんな風に思ったことが、一度や二度あるはずだ。

人が話しているのに途中で自分の話にすり替えてしまう人、元々いる人達が何を話していようと関係なく、現れるなり自分の話を始める人。この現象はたぶん読書でも起きていて、いつの間にか、ちゃんと聞き終わる前に(SNSなどで)話し始めるようになる。読み進める内に引っ掛かりが増えるのは、単純にそれだけの年齢、経験を重ねた為。何も自分自身に劇的な変化があった訳じゃない。

 

私自身、自己啓発の類の本があまり得意ではない。散々読み漁ってきた上で言うが、読み手にとってどうしても『自分はできている前提の下に展開される理論』になりがちで、他人に厳しく自分に甘い者にとっては『頭でっかちを促進するための栄養剤』になりかねない。『足元グズグズなクセに正論を振りかざす人間』代表として、用法用量、副作用を加味した上で付き合うことをオススメする。

 

つらつら書いてきたが、今回この場で糾弾したいのはそんな「思い上がり」である。自分の目から自分は見えない。無意識に誰かを評価しているように、自分も誰かから評価されている。そんな当たり前を徹底的に突き詰めたらこの作品になる、というのが今回の前置き。……あ、思い出しました? ここ『独り言多めの読書感想文』会場です。タイトル見直しても間違ってませんよ。

 

『何者』始め、『世にも奇妙な君物語(リア充裁判)』『ままならないから私とあなた』『スペードの3』に分類される表題作。朝井リョウさんのすごい所は、読者の内側から物語を展開できることだ。

言語化まで至らなかった、けれども確かに感じたことのある思い。それを丁寧に洗い出していく。イメージはさつまいも。掘り出した状態だとシルエットしか分からない。洗ってみて、半分に割ってみて「それ!」と分かるもの(『この汚ねぇのに身に覚えねぇの? オマエの内臓だよ』と闇の淵からのぞいているのは浅野いにおさん。私にとって似て非なる、どちらも好きな作家さんだ)
だからきちんと共感できて、知らぬ間に主人公に成り代わっている。その上で、鮮やかな太刀筋で斬られる。突然のことに、斬られた側はすぐその事実を受け入れられない。戸惑いながら該当する一行目をもう一度目で追う。そうしてようやく理解する。不意打ち、裏切りはまるで身代わり。あわてておまわりさんを呼んだところで、物語を最後まで読み進めれば分かる。逮捕されるのは完全にこっちなのだ。

深く一つの物事を突き詰めて考え抜いたものを、自ら壊す。壊す為にその題材について考え抜く。そうしてそれをまた壊す。浮かぶのは笑いながら創造と破壊を繰り返す幼児。何より圧倒的に一つ一つの要素が深い。しかもそれは誰もが通れない経路ではなく、ただ掘ったままのいもを放置していただけ。ただの怠惰だとと思い知らされ、そのことがたくやしくてたまらない。

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【参考:ドッグイヤーの数=自分語りをこらえた回数】

 

 

〈プロとアマの境界線〉
〈増えるサロンと潰れていく映画館〉

 

その「考え方が古い」として飲み込んできたやるせなさをキレイに洗い出し、割ってみせてから、目の前で投げ捨ててみせる。カッとなって振り上げたこぶしの行き場はない。投げ捨てた先で芽吹く命。振り上げたこぶしの行き場はない。その人が作品を残したのは何日も前のこと。今現在、目の前に実体が伴うはずがない。

だから私は、この場において、その芽に水をやることを選ぶ。ここに書いていること自体「有名な作家さん」の威を借りたただの散文に過ぎない。だからいただいた反応は最終全て原作者の元に集まるし、反応がなかったらなかったで、スベらせてごめんなさいと潔く頭を下げる。ここまで来ると小梅太夫顔負けの顔芸を披露する自信がある。

何より、ここにこれだけの時間を割かせる実力に腹が立つ。上手いのだ。上手いとしか言いようがない。全体的にストレスフルでやるせなさに苛まれる展開が続く分、一つの結論に辿り着いた時の爽快感と言ったらない。そう来たか、と。その答え(霧を晴らす方向性の提示)まで本当は自分で辿り着きたかった、と。でも経路こそ辿れても、ここまでは辿り着けなかった。

くやしいから、やるせないから、この思いを共有したくて書き残す。これは、この文章自体、私なりの作品紹介だ。話を戻そう。

 

 

人の話を聞けない人がいる。そんな風に思ったことが、一度や二度あるはずだ。

 

それ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたのことだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知ってるんだよね。ここでは冒頭何文字かが紹介に載る。あなたは共感して入ってきた。その瞬間、誰かをそう評価したんだ。

 

ここまで読んでいただいてありがとうございました😊うれしい。

この作品の読者(ヒガイシャ)がもっともっと増えますように。心より願いを込めて。

……単発で終わんないなコレ。同じ題材で3本ほど書きます。ちっきしょー。