【深】独り言多めな読書感想文

⭐️1つの作品に対して記事が複数に渡るものを収録⭐️

【3、絶対に許せない距離なんてなかった(皆元有美)】『カインは言わなかった』

">「親しくなるほどに男性は近づき、女性は離れる」というのは、YouTubeで垂れ流していた心理学で言っていたもので、だからこそ許せない距離というのがある。前回も少し触れたな。今回取り上げる一文、紹介しよう。 "> 〈『大丈夫だって、この女には指一本触…

【2.5、続オヒメサマのキゲン(望月澪)】『カインは言わなかった』

">表現者として「得る」ために自ら傷つくことを選ぶ自傷、いや事象。澪についてもう一つだけ話をさせてほしい。 元もこもない言い方をすれば、結果的に「バレエより男を選んだ」訳だが、じゃあ澪にとってのバレエとはどれほどのものだったか。〈それを決して…

【2、オヒメサマのキゲン(望月澪)後編】『カインは言わなかった』

">自分にとっての相手と相手にとっての自分。近しければ近しいほど、良好な関係と仮定したとき、果たして豪と澪はどうだったか。ベース男性としての豪は女性に不足しない。豪にとって描くことこそ至上であり、セックスにわざわざ労力を割きたくないのと同列…

朝井リョウさん『正欲』映画感想文(後編)

【3、言うても王道は変わらんぜ?】 映画の主張としてマイノリティ側からの展開だから、どうしても捻くれて見えがちなのはわかる気がするのだが、いかんせんちょっと偏りが大きいカナというのも印象として残る。「将来のことを考えて、多少無理にでも学校に…

【2、オヒメサマのキゲン(望月澪)前編】『カインは言わなかった』

">表現者として「得る」ために自ら傷つくことを選ぶ事象、いや自傷。 私自身、小説を書く上で、自らが幸せであってはならないと思っていた時期があった。不幸の中にいた方が感性が研ぎ澄まされ、いい作品が生まれやすい感覚があった。 "> あ、こっから先特に…

朝井リョウさん『正欲』映画感想文(前編)

">映画化って時間制限あるから作品本体にメスを入れなきゃいけなくなるのは分かるんだけど、時にそれで歪んじゃったり、そうじゃないんだけどなあって違和感が残ることがあって、でも今回『正欲』にそれは見られなかった。 全てを語らなくても単語でトラウマ…

【1、コップ一杯分の水(尾上和馬)】『カインは言わなかった』

作中印象的なのは「誰かと比べて劣る自分」 憐憫の情はかけられない。不相応だけど成立するなんてこともない。主演と比べられる自分、ミューズと比べられる自分。同性異性関係なく、「その筋」において不足する自分。ここに、全てに共通する一つの答えが投げ…

序、芦沢央さん『カインは言わなかった』

「その世界」というのは、中にいる人でないとわからない。 恋人、上司、家族。一対一だろうと、一対複数だろうと関係ない。「その世界」での常識「その世界」ならではの理がある。 特に演劇などの芸術関係は、わざわざ観に行かなければ関わることもない。そ…

『キリエのうた』もちょっと映画感想

">【強要と反発、感性を守る】 社会のルールに従うことを強要されることへの反発。 "> ・主人公キリエは津波で家族を失うも、少女ながら自分で考えて生きようとしていた。後に姉の婚約者に保護され、役所に向かうが、血縁関係がないため、赤の他人として問答…

【4、男親として(村木嵐さん『まいまいつぶろ』)】

">優先順位というものがある。立場によって簡単に殺されかねないこの時代は、とにかく生き延びることが最上だった。 "> 同作者の著書に『阿茶』というものがある。『まいまいつぶろ』が9代家重を取り上げているのに対し、初代家康の時代を背景として描いた作…

【3、家臣として(村木嵐さん『まいまいつぶろ』)】

">親は子より先に死ぬ。だから親は子が一人でも生きていけるようになるまで育てる。「孫の顔が見たい」というのは、だから親にとっての子が親になり、もう心配いらないということを納得したいがための欲求なのだろう。 "> 忠音にとって家重は〈他でもない、…

【2、妻として(村木嵐さん『まいまいつぶろ』)】

覚悟、と言った。 始めそれは「将軍家に嫁ぐ上で、いかなることにも動じないという気位の高さ、一種の強がり」かと思った。違った。このように、仮に同じ言葉で表現したとしても、人によって容量が桁違いなことがあるから注意が必要だ。ここに「共通の言語で…

【1、友として(村木嵐さん『まいまいつぶろ』)】

">前提として障害故、基本発語がままならない家重も、かつて母をもって意思疎通を図っていた。その母も、家重が3歳の頃死別してしまうのだが、だからこそ意思疎通がままならない、本当の自分が出て来られないというのは相当なストレスだったに違いない。 "> …

【序、まいまいつぶろ読書感想文】

婚活市場にこんなプロフィールが流出したらどうだろう。 ・自ら望まずとも肩入れするような者が現れる程の〈なんとも美しい形の目〉を持ち、 ・年収約800億 ・思慮深くやさしい人柄 外見、年収、性格。 どれかを取るならどれかを捨てろと言われる現実で、そ…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【5、愛】

">過去に一度だけ「愛してる」と言ったことがある。恋愛の仕方は愚か、まともな人との付き合い方、つながり方さえ知らぬまま、互いを傷つけることでしか成り立てなかった恋のど真ん中。 結論から言おう。ドン滑りした。「それ」は、口にした瞬間、屋根まで飛…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【4、言外】

">「無償の愛」は尊いか。それは、分解して成分を抽出した時、本当に純度100%で生成されていると思うか。仮に純度100%だったとして、それを今のあなたは欲しいと思うか。 "> 【抽出】 『地獄の楽しみ方』より〈言葉というのは多くの情報を捨てて、ほんのち…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【3、土台】

">ふと思い出したんだけど、数日前「文系でもハマると言うから〜」という記事を出した時、〈「ここが面白いんだよ!」と力説されたところで「へえ」以上に何も出てこないのは〉ということを書いたんですね。これってまんまブーメランで、私自身こうして夢中…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【2、過程】

"> 確かに仕事をする上では何より結果が求められるだろう。いくら「寝る間を惜しんで頑張りました」と言われたところで、こちとらそんな働き方を求めた覚えはないし、むしろそれで身体を壊されて監督責任問われた方が困る。しかしだからと言って、実際「寝る…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【1、養分】

「〇〇を食べたい」と思うのは、そのものが保有する成分が体内に不足していることから起こる現象だという。それはマイナスを通常に戻す行為。 養分、という言葉がある。己の中に取り込み、高める。それは「マイナスを通常に戻す」以上にプラス。今までの自分…

自由研究と読書感想文をいっぺんに終わらせてやんよ【序】

"> 自分にとっての相手と相手にとっての自分が限りなく近しいこと。 理想は敬意で繋がれるような、高め合うというよりは刺激に事欠かない関係。 "> バラ、ガーベラ、カーネーション。 読書感想文、今回は異なる本から抽出した色味で、元々白だったものを私な…

【理想の愛を生きる】谷崎潤一郎『春琴抄』(後編)

">あくまでこれも推測に過ぎないが、春琴の家の周りに「艶かしい店は近くにない」とわざわざ断りを入れていて、例えば実践に及ぶことはなくとも、客相手の商売としての「琴」「三味線」という見方をした時、佐助は始め「練習相手」だったのではないかとも思…

【理想の愛を生きる】谷崎潤一郎『春琴抄』(前編)

">作品は「春琴、ほんとうの名は鵙屋琴」から始まり、主人公が「近頃手に入れたものに『鵙屋春琴伝』といふ小冊子があり、此れが私の春琴を知るに至つた端緒であるが」というように、この作品内での話は、小冊子を通じて知った話であり、第三者が過去を振り…

【理想の愛を生きる】谷崎潤一郎『春琴抄』序

">〈失礼だな、純愛だよ〉 "> 美しい日本語に声に出して読みたい日本語。今回私をもってノミネートしたのは、そんな某人気漫画を映画化したものから抜粋したものだ。 文脈なくても読める。前にはおそらく「失礼」に当たるやりとりが行われていて、それは「純…

【誰かと生きること】朝井リョウさん『スター』③

3年ほど前から猫を飼っているのだが、それまで猫のネの字も興味なかった私からすると、彗星の如く現れた異物である。まず言葉が通じない。叱ってもほぼ意味がない。四六時中甘えたがる。そもそも「四六時中甘えたがる猫」って何だ。そこからして想定を大きく…

【悔しいですと言えるか】朝井リョウさん『スター』②

「東京で必要なのは負け顔と泣き顔」これは私にとってぶっちぎり一位の名言だ。出所は芸人、かまいたち濱家。 前提共有のために「負け顔」をググってみたら「負けている時の顔」と、「無駄に検索エンジンの容量使うんじゃねぇ」レベルの解答が出てきた。これ…

【読了後必ずゾッとする】朝井リョウさん『スター』

人の話を聞けない人がいる。そんな風に思ったことが、一度や二度あるはずだ。 人が話しているのに途中で自分の話にすり替えてしまう人、元々いる人達が何を話していようと関係なく、現れるなり自分の話を始める人。この現象はたぶん読書でも起きていて、いつ…